伝統工芸士 岡村日出正氏と竹画仙紙【観雲】の物語

伝統工芸士 岡村日出正氏と竹画仙紙【観雲】の物語

竹画仙紙【観雲】とその作り手である伝統工芸士

岡村日出正氏についてご紹介いたします。

 

 

 ――父から渡されたたった一枚の紙には

       竹紙のすべてが記されていた――

 

~【観雲】ができるまで~

1300年以上続く因州和紙の里 佐治で紙漉きをしていた職人一家

岡村家に生を受けた日出正氏。

父である大吉氏が『孟宗竹』を原料とする書道用紙を漉くことに成功する。

 

      雲の上から観るほどに美しく

         その上がない紙

 

そのとき出来上がった【観雲】にはこのような想いが込められている。

 

 

 ~父と同じ道を選んで~

18歳になり、来春からの就職先も決まっていた日出正氏だったが

岡村家をある事件が襲う。

一家の大黒柱でもある父 大吉氏が病に倒れたのだ。

 

選択を迫られる日出正氏。

 

すでに決まっていた就職先で勤めるか、

父親の後を継ぎ、紙漉きの道に入るか。

 

日出正氏は母と手を取り、父と同じ紙漉き職人の道に入ることを選んだ。

 

日出正氏は当時の様子をこう振り返る。

「母が紙漉きをする姿を見て、高校三年生の三学期から漉き始めたんですよ。

一人で山に登って、竹を切ってはトラックに運び、原料づくりをしていました。」

 

 

~日出正氏と【観雲】~

そんなある日、突然父から一枚の紙を渡される。

 

渡された一枚の紙には赤い墨液で

びっしりと竹紙の原料配合について書かれていたという。

 

当時「竹」を原料とした書道用紙を漉く職人は岡村家のみであり

製品の美しさや書き味の良さから日本各地に知れブランドとなった。

母が紙漉きを引退し、日出正氏が一人で漉くようになってからは

家族七人の生活を支える柱となった。

 

 

~【観雲】を守っていくために~

そんな中、日出正氏は【観雲】の品質を守りつなぐために動き出した。

原料を砕く方法や簾など、紙漉きにかかわる工程をすべて見直し自ら設計も手掛けた。

そうして、今の【観雲】はこれからも変わらぬ品質を守り、

後世へとつながっていく。

 

 

 

観雲・・・雲の上から観るほどに美しく、その上がない紙

 

主原料:竹、雁皮等

水が冷たい冬にしか漉かない「寒漉き」を用いているため

繊維が締まりなめらか紙質が特徴的。

その書き味の良さから書道用だけでなく水墨画にも使用されている。

 

因州和紙のふるさと 佐治

伝統工芸品である「因州和紙」のふるさと 鳥取市佐治町は

鳥取市の中心部から南に33キロメートルの場所に位置し

豊かな大地が育てる原料に恵まれている。

良質な紙に欠かせない清流「佐治川」がはしり

千三百年前より紙を漉いてきた。

多い時では三十軒もの紙漉き場があり、当時の書道文化を

支えてきたが、現在は五軒ほどが残っている。

 

岡村日出正氏

1958年 鳥取市佐治町に生まれ十八歳から紙漉きの道へ

1993年 三十五歳の時、鳥取で初の伝統工芸士として認定

1995年 和紙産業の振興と製造技術の保存、伝承を目的として

     設立された「かみんぐさじ」の代表に就任

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